マリーシア

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あまり興味を引かれるタイトルではなかったけど、戸塚啓ならば間違い無いだろうと思い、本屋で見つけた瞬間に買ってしまった。

マリーシア (光文社新書)
戸塚啓
光文社
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著者曰く、この本は昨今の戦術ブーム(これとかこれとか)に対してのアンチテーゼとのこと。

マリーシアというと、審判に隠れて相手のユニフォームを引っ張ったり、わざと倒れてファウルをもらったり、リスタートや選手交代で時間を稼いだりと、狡くて卑怯なプレーというイメージがあるけど、本当のマリーシアはもっと深い意味を持つものだ、というのがこの本のメッセージ。

本書はまず、カカへのインタビューから始まる。マリーシアについての本が、品行方正で優等生キャラなカカの話から始まるというのが面白い。カカは、相手をいらいらさせたりするようなプレーはやり過ぎだとは断りながらも、日本人にはマリッツィア(マリーシア)が足りないと語る。

カカに限らずマリーシアといえばやはりブラジル人ということで、本書は主にJリーグに所属するブラジル人選手へのインタビューをヒントに、Jリーグや欧州リーグ、代表戦などの様々な舞台でマリーシアが発揮された、またはマリーシアが足りなかった場面を読み解き、「マリーシアとは何か?」を考察していく。

例えばドゥンガの言葉。

日本に足りないのはマリーシアだ。(略)日本の選手には、相手をだますような技術や戦略、心の余裕がない。

そしてシャムスカ。

サッカーでは様々な状況が起こりうるわけですが、マリーシアとはそうした様々な状況のなかで、自分たちに対して有利な方法を見つけ出すということです。

ジャーンも。

サッカーだけでなく一般社会においても、20歳と27歳の人間を比べたら、年上の人のほうがマリーシアを持っている。それは色々な経験をしているからでしょう。

要するに、マリーシアとは自分の望む結果を手に入れるために、頭を使って考え、行動することのすべてだといえるようだ。naiveとかinnocentの反対語といえるかな。知恵、駆け引き、そして何よりも心の余裕。もちろん、反則ぎりぎりの汚いものから、ゆっくりしたパス回しで試合のテンポをコントロールするなどのクレバーなものまで、その程度には幅がある。どこまでがクレバーでどこからが汚いのか、そこに明確な基準はないけど、とりあえず勝つための努力であるという点は共通している。

本書ではほとんど触れられていないけど、ジャーンの上記コメントの通り、このマリーシアはサッカー以外の仕事や対人関係でも大事なものだと思う。自分の望む結果を手に入れるための、知恵、駆け引き、心の余裕。クレバーさと汚いやり方の明確な基準は無いけど・・・と。

ちなみに、「マリーシア」でググってみたところ、こんな文書が2番目にヒットした。

日本人だけがわからないマリーシアの意味【戸塚啓】│スポニチワールドサッカープラス

2006年の、W杯直後の記事だ。本書は、この後も筆者がマリーシアの意味を考え続け、それが結実したものなんだと思う。

戦術論は僕も大好きだし、ヨーロッパのトップレベルのサッカーを理解する上で戦術は重要だけど、少なくとも今の日本代表にとって必要なのは、高度な戦術よりもこっちのほうかも。

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