明治時代の八甲田山雪中行軍遭難に基づく小説。人名が少し変えてあったり、(おそらく)細かいエピソードや描写が作り込まれている以外、ストーリーは基本的に史実通りのようです。
あらすじについては、僕がこの本を知るきっかけとなった下記エントリーを読むべし。
八甲田山死の彷徨 - 情報考学 Passion For The Future
単純な読み物としても十分面白いんですが、マネジメントのなんたるかを学ぶためのケーススタディーとしてもすごく興味深い。以下、僕が本書から学んだ教訓をメモしておきます。ネタバレ注意。
本書の中でも何度も言われているとおり、第5聯隊の失敗の最大の原因は間違いなく「山田少佐による神田大尉の指揮権への介入」です。ただ大事なのは、この話の中では(おそらくはわかりやすさのために)山田少佐が愚かで誤った判断を下す人物であることが強調されているものの、仮に山田少佐が聡明で、時には神田大尉より正しい判断を下すことがあったとしても、部下の指揮権に無遠慮に介入するようなことは絶対にあってはいけないということ。また、本書の中ではあまり重要な点としては取り上げられていませんが、山田少佐による指揮権への介入を許し、時にいじけた態度で自分の負った責任から目をそらした神田大尉の意志の弱さもまた、山田少佐の傲慢さと同等かそれ以上に責められるべきことだと思います。
教訓として学べることは、自分が上位管理者であり、自分より下の管理者に何かの仕事を任せた場合は、決して下位管理者の指揮権を土足で踏み荒らすようなことをしないこと。そして、もし下位管理者の明らかな誤りを正すことが必要な場合でも、下位管理者の自尊心や責任感と、メンバーに対する下位管理者への威厳を決して損ねることがないように万全の注意を払うこと。そして、自分が下位管理者で上位管理者が自分の指揮権に介入してくる場合には...。難しいですねえ。毅然とした態度で対応することが必要なのは当然ですが、軍隊はもちろん現代の会社でもそれが難しい場合もあるでしょうし。そうなると、もう「ケツまくる」しかないのかも。
あと、話の中では一応「良い方のリーダー」として描かれている徳島中隊長も、時に軍隊ならではの精神論を振りかざしたり、民間人の案内人に非人道的な振る舞いをしたりしています。この辺の善し悪しは時代や事情によって変わってくるだろうけど、目的遂行のためには時に非常になることが必要だとしても、やはり恨みを買うようなことがあると、それがリスクになることも考えるので注意が必要かと。
最後に、直接本書とは関係ない話だけど、軍隊であれば基本的に命令によって強権的に部下を動かすことができますが、現在のビジネスの世界ではそう単純にはいかないということも注意しておく必要があるかな。ドラッカーのいう「知識労働者」を動かして仕事をさせる場合には、「何をさせるか」よりも「どうやってさせるか」の方が難しい場合も少なくないと思うし。
面白さもお役立ち度もかなり高い本でした。
