出版されたのが半年前ということで少し旬を過ぎてしまいましたが、とても「なるほど!」と思わされた本だったので、感想を書いてみます。
アスキー
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ネットで良く語られる「ガラパゴス」論のように、ソフトウェア開発やケータイの話中心かと思いきや、さにあらず。世界における日本の位置づけや日本の国家としての競争力についての考察に始まり、「パラダイス鎖国」となるに至った日本の経緯や性質を論じ、それをもとに今後日本が国家として、個人として、どのように生きていくべきかを提案しています。
僕がもっとも「なるほど!」と思わされたのは、日本の競争力についての下記の分析です。
すなわち、金融政策や各種の権利保護など、立場の違いにより賛否両論あるような点はなかなか先に進まないが、「鉄道が便利になる」「上下水道が整備される」「初等教育を普及させる」などといった、誰も批判しにくく、暗黙の合意が形成されやすいものについては、どんどん進む。
こうした特徴は、高度成長期のように何をすればいいかが明確な時代には有利なものでしたが、日本の経済や社会がある程度成熟し、試行錯誤によるイノベーションが必要な現代では、不利なものだということです。
一方、「実はアメリカこそ超ドメスティックなガラパゴスだ」ということもしばしば言われますが、本書でも同様の分析がなされています。その上で、アメリカがガラパゴス(パラダイス鎖国)でありながらイノベーション経済をリードしている理由を、日本
が国全体で均質なのに対して、地域ごとに独自性があることとしてとらえています。
たとえば、ミシガンの自動車産業に打撃を与えそうな、自動車排ガスの厳しい基準が、カリフォルニア州ではすんなり導入される。ハリウッドの映画産業が目の敵にする無料ネット配信事業がシリコンバレーでは大きく育つ。「議論の分かれるもの」であっても死ぬ覚悟で戦う必要はなく、利害関係の異なる場所で、ちょっと始めてみることが容易に可能である。
まさに多様性の強さですね。逆に、国という大きな単位で方向性を合わせなければいけないと思っている日本のやり方は、一か八かの非常にリスキーなギャンブルと言えるかもしれません。
こうした現状に対して、筆者が唱えるのは「ゆるやかな開国」です。日本の特徴を否定するのではなく、旧来の日本型な人もいるし、シリコンバレーっぽい人もいるし、いろんな人が時には対立したり協力したりしながら全体として日本経済を構成するような、多様性を許容する社会、それこそが解ではないかということです。
(特にネット上では)多くの人が語っているテーマなので、あまり新しい発見は期待せずに読んだのですが、分析・提言ともにとても質が高くて、刺激的な本でした。早速、筆者のブログもRSS登録です。
