2008年10月アーカイブ

Microsoftがエンタープライズ向けのクラウド・コンピューティング・サービス「Windows Azure」を発表しました。解説記事はたくさん出ているけど、とりあえずこの2つを読めば全体像は理解できます。

【レポート】PDC2008 - 米Microsoft、クラウドサービスOS「Windows Azure」発表 | ネット | マイコミジャーナル

クラウドOS「Windows Azure」と対応サービスを発表、MS - @IT

Google App Engineのような.NETベースのアプリケーション実行プラットフォームに加え、Exchange/SharePoint/SQL Serverのようなエンタープライズ・サービスも用意されていて、MSが出しうるクラウド・コンピューティング・サービスとしては、これ以上ないカタチのものを出してきたな、という感じです。さすがはレイ・オジー。

また、MSはWeb版のOfficeについても発表。

[PDC 2008]ついに「ブラウザ版MS Office」が登場、無料Webアプリの波に抗しきれず:ITpro

これももちろんユーザーとしては諸手を挙げて歓迎だし、意地悪な見方をすれば、この記事のタイトルのように「まあMSとしてもそうせざるをえないよな」と言えなくありません。

が、MSのこの戦略、どの程度の勝算があるものなのか、読み切るのが難しい。死中に活を見出したのか、それとも単に流れに逆らえなかったのか。言い方を変えると、この新しいビジネスモデルで今までのように儲ける算段があるのか、それとも今までのようには儲からないのを承知でこうするしかなかったのか。

いずれにせよ、MSがここまではっきりと方針を打ち出したことで、ユーザー・アプリケーションのみならず、エンタープライズ・コンピューティングの世界でも、クラウド化の流れがいよいよ本格化してくるのは不可避でしょう。

僕がコンピュータの仕事をし始めて10年ほどですが、エンタープライズ・コンピューティングの世界は間違いなくこの10年で一番のドラスティックな転換期にさしかかっていると思います。正直言って、この先数年後、SIerやS/W,H/Wベンダーのビジネスモデルがどうなるか、さらには我々コンピュータ技術者にどんな仕事があるのか(もしくは無いのか)、全く読めません。こわいこわい。

経済情勢もめちゃくちゃだし、しばらくは動向を注視しつつ、ファンダメンタルなスキルを身につけながら、動勢を見極めたいとおもいます。

池田信夫 blogな池田センセイの著作。

ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書 543)
池田 信夫
PHP研究所
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経済学者ハイエクの思想を、ケインズやマルクスなどとの対比の中から、昨今のインターネットを初めとする新しい社会の思想を先取りした存在として解説しています。

この本はこの本で面白かったんだけど、僕がつくづく思うのは「経済学はいろんな学派があって、何がなんだかよくわからん」ということです。本書でもいろんな学派の考え方や、その論争の歴史が説明されてたりするんだけど、そもそもハイエクや池田センセイの立ち位置だって一つの考え方なわけで、もちろんそれに反対している人たちもいるんだろうし、池田センセイが「この学派はこういう考え方だったかが、こういう意味で間違っていて、現在では時代後れ」と書いても、僕としてはそれが正しいのかどうかわからない。

これがたとえば物理学なら、最新の理論にはもちろん色んな論争があるけど、たとえばニュートンやアインシュタインの理論について疑問を持つ人はいないだろうし、実際世の中がその理論に従って正しく動いていることが証明されているわけだから、そのレベルについてはどの本を読んでも安心して勉強できる。でも経済学の場合は、たとえば「財政出動は有効か?」という超基本的な問題すら人によって意見が違っていて、かつ物理学のような検証もできないわけで、初心者が絶対的に信頼できる理論が無い。初心者としては、これが辛い。

困ったもんだなー。中立的な立場で書かれた、「いろんな経済学派の違いと評価、および現在の状況との整合性」についてのわかりやすい本はないものか。

最近マーケティングに関する本や雑誌記事を読んでいる中で、「いち消費者として商品と向き合う自分自身を、同時に企業側からマーケティング視点で見たらどうだろう?」と思いつきました。

たとえばMacBook。新MacBook、僕は超欲しいです!多分そのうち買います。Macは以前から欲しかったんだけど、最近持ってる人も増えてきたし、いまThinkPadでやってるほとんどの作業は(仕事を除けば)ブラウザベースだから問題無いし、値段もこなれてきたから、そろそろ手を出してもいいかなー、と思ってるわけです。これは、有名な「キャズム」のセグメンテーションである「イノベーター」「アーリーアダプター」「アーリーマジョリティ」「レイトマジョリティ」「ラガード」でいうと、僕は「アーリーマジョリティ」、つまりその製品のメリットが明らかになり、またリスクが十分軽減されたことが確認できたところで手を出し始める層である、と言えそうです。そういう意味では、MacBookはまさにキャズムを超えて、Windows PCと同条件で競争をし始めたのかもしれません。

あと、iPhone。これも個人的にはすごく興味があるけど、今のフツーの携帯から乗り換えるのはちょっと怖いし、実際不便を感じるだろうなぁ、と思います。ネット上の議論を見ていると、「iPhoneは今までのケータイとは別物。iPhoneサイコー!」という人たちと、「ワンセグもおサイフケータイも使えないんじゃ話にならないよ。iPhone使えねー。」という人たちが熱い議論をしていたりしますが、これらの人たちはそもそもマーケティング・セグメントに属しているわけです。だから議論は絶対にかみ合わない。ちなみにですが、iPhoneを買った人が必死でその良さをアピールしているのは、自分のとったある行動(たとえば「ある商品を買った」こと)が正しかったことを事後的に確認したいという心理状態、「認知的不協和」によるものだと言えそうです(この言葉は戦略プロフェッショナルの心得 で覚えた)。

ある商品の善し悪しを判断する上で、企業からの一方的な広告だけでなく、口コミ情報を活用することはとても有意義ですけど、自分自身のマーケティング・セグメントをきちんと意識しておかないと、自分にとっては全然見当違いな意見に惑わされることになってしまうかもしれません。個人的に賢い買い物をするためにも、マーケティングの知識は役立つかも。

6~7年前に清水の舞台から飛び降りる気持ちで(いやまじで)買った、オメガ・スピードマスター。どうも最近遅れがちになってきたので、オーバーホールに出すことにしました。

せっかくなので本家に持って行こうということで、銀座のOMEGA Boutiqueというところへ。

松坂屋近くのニコラスGハイエックセンターというビルです。1Fはいろんな時計のショールームみたいになっていて、入っていくとイケメンのお兄さんと美人のお姉さんがお出迎え。「オメガのオーバーホールをお願いしたいんですけど」と言うと、5Fに案内されました。どうやらこのビルはスウォッチ・ジャパンのビルらしく、スウォッチ・ジャパン・グループのいろんな時計のショップやカスタマーサービスが入っているみたい。

Swatch Group Japan

で、その5Fがオメガのカスタマーサービスです。広々としていて、すごいオシャレな空間。

omega1.jpg omega2.jpg

「オーバーホールをお願いしたい」旨を伝え、見積もりを取ってもらいました。2~3分くらいでしたが、どうやら蓋を開けて内部を確認してくれた模様。「油が切れていて、水分もついているので、やはりオーバーホールされることをお勧めします。」とのこと。期間は6週間、費用は57,500円(!)とのこと。あいたたた...。

というわけで、しばらくは腕時計無しの生活です。でも今日の帰り道だけで数回、付けていない腕時計を見ようとしてしまいましたが。

『スカイ・クロラ』シリーズはホントに謎だらけの話で、特に「主人公は結局誰なのか?」というのが最大の謎なんだけど(読んでない人は「主人公が誰かわからない小説って、なんだそれ」と思うだろうけど...)、今日のMORI LOG ACADEMYにそのあたりのヒントが載っていました。

MORI LOG ACADEMY: 公開対談みたいな

Q 『スカイ・イクリプス』を読んでも、まだ読み解けない読者のために何か少しヒントをいただけないでしょうか。

A 無理に読み解かない方が良いと思います。ヒントとしては、以下のとおり。

  • シリーズ5作では、主人公(一人称)はそれぞれ1名。

  • クローン(特に短時間で人間を再生する)や記憶移植といった非科学的なものはこの世界にはない。

  • 「スカイ・クロラ」から読むから難しく感じるかもしれない。たとえば、草薙瑞季は、水素の娘だと思っている人が多いですが、土岐野がそう言っただけです。このように、何を信じるべきか、ということが重要だと思います。

なんと!特に2つめの「クローンや記憶移植はナシ」という回答はかなりのショック。

そもそも、僕は「『スカイ・クロラ』シリーズという方程式には、『主人公はだれか?』という解は複数存在する。よって、唯一の解を探すのではなく、方程式自体を眺めて楽しむのが、『スカイ・クロラ』シリーズの正しいたしなみ方」だと思っていましたが、実は唯一の解が存在するということ?しかも、「クローンや記憶移植はナシ」という境界条件を前提とすると、いままで「こうかな?」となんとなく思い浮かべていた解が全滅だ...。

このタイミングでこんなヒントを出してくるとは、さすが(意外と)商売上手な森センセイ...。うまく乗せられまくりで悔しいけど、もう一度読み返さざるをえんなー。

スカイ・イクリプス
スカイ・イクリプス
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森 博嗣
中央公論新社
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dankogaiさん強烈推薦の本ということで、とりあえず買ってはあったんですが何となく読む気がしなくて(だってdankogaiのアフィリエイト魂がひしひしと感じられすぎて...)放置してあったんですが、今日やっと読んでみました。

はじめての課長の教科書
酒井穣
ディスカヴァー・トゥエンティワン
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欧米の理論の理論がそのまま活用されているトップマネジメントと違い、日本固有の強みを持ちながらあまりそのノウハウが整理されていなかった、中間管理職の為に書かれた世にも珍しい本です。

「部下のモチベーションを上げる方法」や「コーチングのやり方」みたいなそれらしいトピックに加えて、「低い人事評価を付けるときは、だいぶ前からそれとなくほのめかせて覚悟させる」とか「海外赴任は戻ってきたときのポストの確保が重要」みたいな、身も蓋もないくらいリアルな意見もあったりして、なかなか面白いです。

僕の仕事場では、課長(ファースト・ライン・マネージャ)って「そんなに偉いっていう感じでもないし、給料もあんまり上がらなそうだけど、責任だけは重くて大変そう...」というイメージです。でも、この本でも書かれているとおり、現場の情報と経営の情報の両方がもっともバランス良く入ってきて、現場にタッチしながらも末端の社員(係長以下)とは全く異なる視点や知識が求められる、それなりにやりがいのある面白い仕事なんだろうなーとも思うようになりました。この本を読んで。

今のところその予定は無いけど、いつかその立場になることがあったら、もう一度読み返してみようと思います。

村上春樹に会いに行く - プレジデント

村上さん、アメリカではこんな感じの朗読会を時々やっているようですね。

「同時代の好きな作家・文化人はできるだけ生で見ておこう」と先日思ったんですが(今のところ見れたのは森博嗣先生だけだけど)、村上さんは日本ではこういうイベントをやることは無さそうだし、一生見れないかもなぁ。

村上さんは、先週、来年出版予定の新作を書き終えたそうだ。

とりあえず、新作を待って、出版された即入手して、じっくり丁寧に読もう。誰がなんと言おうと、この人はスペシャルな小説家だと思うのです。

とりあえずローソンで売ってるぶんは買い占めた。

でも意外と近所で売ってるところが少ない。楽天でまとめ買いしようか。ここが一番安いかなー。

タマノイ はちみつ黒酢ダイエット125ml パック×24本入

以下、やや自慢。∩( ・ω・)∩


先月受験したTOEICの結果が返ってきました。Listening 480 + Reading 485 = 965、でした。ちなみに5年前に受けたときからプラス60。TOEICには得点調整があるのでなんともいえませんが、満点が990点なので、大体5問くらい間違えた計算です。終わった瞬間は「満点取れるかも?」と思ったけど、やっぱりそんなに甘くは無かったな。

ご存知のとおり、TOEICでは本当の英語能力に加えて受験テクニックがすごく重要です。でも、この成績と満点との差は100%英語能力によるものだと思います。時間が足りないわけじゃないし、(極論だけど)あれが全部日本語の試験だったら、間違いなく満点が取れてると思うので。

でも、ここから満点を目指して頑張るかというと、もうそれはないなぁ。TOEFLっていうのもあるけど、留学とかするわけでもないし。この先は、本が読めるとか、映画やニュースが聞き取れるとか、言いたいことがスムーズに話せるとか、そういう実用力をますます磨いていきたいです。

これは良書。初心者がマーケティング戦略についてその全体像をざっと理解するのに、最適な本です。

「バリュー・プロポジション」を初めとするマーケティングの基本的な考え方や、4PやSWATなどの基本的なフレームワーク、そしてキャズムイノベーションのジレンマなどのマーケティングの有名本の考え方を、マーケティングプロセスを順に追いながら説明しています。

しかも、教科書的な内容では決して無く、教科書的な理論が単純に通じるわけではないことや、その上でどんな考え方をしていけばよいかが実際の事例を元に説明されていて、読んでいて面白い。

特に、「単なる『値引き』と『エブリデイ・ロープライス』は違う」「価格は戦略、コストは事実」などについて説明した「第4章 価格を設定するために」は「なるほど!」と思わされました。

僕は半年ほど前からハーバード・ビジネス・レビューを定期購読しているんですが、これの雑誌を読むのに時間のかかることかかること。これをサラサラと読めるようになるには、まだまだこのあたりの分野について知識が足りないんだなあと痛感しています。HBDRをちゃんと読み続けつつ、あわせてHBDRを読みこなせるだけの勉強もしていこうかな、と。特に今月号(Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2008年 11月号 [雑誌])は「マーケティング論の原点」という特集なので、ちょうどいいかも。

最近日本代表の試合をあまり真面目に見ていなかったんだけど、今日はいちおう最初から最後まで見てみました。ネットしながらだけど。

結果は1-1のドロー。

結果だけを見ていい悪いを言うことは無意味だと思うけど、いくら何でもプレーの内容がひどすぎる。退屈な上に、レベルも低い。人間が動かずに、足下にパスを出す。ボールを受けると2~3人に囲まれていて、当然日本人選手には一人でそれを突破する力は無いわけで。後ろからの押し上げや追い越しもないし、左右のポジションチェンジも無いし。

個人のスキルやパワーがない日本は、ワンタッチ、ツータッチでスピーディーに組織で崩すしかないはずなのに、時間をかけてダラダラとボールを持って、前や横の選手の足下にパスを出すだけ。そんなのでチャンスを作れるはずがありません。

ドイツW杯の時は、いくらひどい代表でも何かしらの希望があったし、負ければ悔しかったし、なんとか頑張って欲しい気持ちがあったんだけど、今の代表には単純に興味を失いつつあります。我ながら凄く悲しい。ヨーロッパのトップリーグの選手にテクニックで負けるのは仕方がないけど、勤勉さや意識の高さで明らかに劣っている現状を見ると、日本サッカーの未来は本当に暗いと思う。

ITにお金を使うのは、もうおやめなさい(IT DOES NOT MATTER.)の著者、ニコラス・カーによる「クラウド」本。原著The Big Switchが以前から話題になっていましたが、10月10日にこの訳本が発売されたので、早速読んでみました。

クラウド化する世界
クラウド化する世界
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ニコラス・G・カー Nicholas Carr
翔泳社
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正直言って、予想通り退屈な本でした。前作もそうだったんですが、IT業界で働いていたり普段ネットを活用してる人にとっては、「今更...」な話がほとんど。でも、これも善作同様、コンピュータ業界で働く全ての人にとって、間違いなく重要な本になるはずです。

タイトル(明らかに「フラット化」のパクリ...)とは裏腹に、「クラウド」に関する記述は本の1割くらい。残りは、コンピュータの歴史やインターネットが社会に及ぼす影響、Web2.0、そして(ユーティリティ・コンピューティングの例えとして出てきた)電力の歴史についての話に割かれていて、「結局何が言いたいの...」という感じ。

でも、この1割のクラウドに関する記述は、非常に的確で、ダイレクトです。つまり、『企業はもう、ITベンダーからコンピュータを買わなくて良い。』と。

これが、一般のビジネスパーソンやビジネスエグゼクティブに向けて書かれているのです。技術トレンドの一つとしての「クラウド」ではなく、IT投資のあり方として、しかもその道の権威の著書に、明確に。

いずれにせよ、どの程度かはわかりませんが、この先数年で「企業にコンピュータを売って、それを導入する」という商売が大幅に減少していくことは間違いありません。今その商売で金を稼いでいる我々は、まずそれをしっかり意識する必要があります。その上で、個人としてどんな技術や知識や経験をつけるべきかも。

IT技術者なら読んでおいた方がいいと思いますよ。色んな意味で。

今日の復習 - ひげぽん OSとか作っちゃうかMona-

現在円高ドル安なのだけど、過去に勉強した経済の基本によれば

・中心産業の輸出産業が打撃を受ける
・輸入品の割安感から物価が下がる

あたりの影響があるらしい。

これだけなら「そんなの常識じゃん」と思う人がほとんどだと思うけど(失礼ですね、ごめんなさい!)、

実際にそうなるのか見守ってみよう。

この視点というか姿勢というか発想は、本当にすごいと思う。難しい本を読んでハイエクだリフレだと語るのもいいけど、こういう誠実さこそ見習いたいものです。

MORI LOG ACADEMY: Macの話をしましょうか

僕が学んだことは、「人の評価を気にする者は人並みになる」ということである。

MORI LOG ACADEMY: 自由ほど難しいものはない

たまには自分で作ってみようと挑戦しても、既製品と比べると、なんか滑稽に見えてしまう。だからすぐに諦める。そして、どんどん既成の品々、既成の情報を自分の周囲に集めるようになるのだ。

忘れてはいけないことがある。それらの品や情報は、誰かが作ったものだということ。そして、それを作った人は「与える側」であり、それを使う人は「受ける側」になる。

受けることは、与えることよりも簡単だ。いつでもできる。受ける側の中では、「選び上手」というくらいの僅かな優位しかない。受け続けることで、知らず知らずのうちに支配されている。一方、与える側には、作り出すことでしか得られないものがあって、それが顕著な「優位」を生むだろう。一線を画するものがここに存在する。

額縁に入れて部屋に飾っておきたいくらいの言葉だ。

出版されたのが半年前ということで少し旬を過ぎてしまいましたが、とても「なるほど!」と思わされた本だったので、感想を書いてみます。

パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54)
海部 美知
アスキー
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ネットで良く語られる「ガラパゴス」論のように、ソフトウェア開発やケータイの話中心かと思いきや、さにあらず。世界における日本の位置づけや日本の国家としての競争力についての考察に始まり、「パラダイス鎖国」となるに至った日本の経緯や性質を論じ、それをもとに今後日本が国家として、個人として、どのように生きていくべきかを提案しています。

僕がもっとも「なるほど!」と思わされたのは、日本の競争力についての下記の分析です。

すなわち、金融政策や各種の権利保護など、立場の違いにより賛否両論あるような点はなかなか先に進まないが、「鉄道が便利になる」「上下水道が整備される」「初等教育を普及させる」などといった、誰も批判しにくく、暗黙の合意が形成されやすいものについては、どんどん進む。

こうした特徴は、高度成長期のように何をすればいいかが明確な時代には有利なものでしたが、日本の経済や社会がある程度成熟し、試行錯誤によるイノベーションが必要な現代では、不利なものだということです。

一方、「実はアメリカこそ超ドメスティックなガラパゴスだ」ということもしばしば言われますが、本書でも同様の分析がなされています。その上で、アメリカがガラパゴス(パラダイス鎖国)でありながらイノベーション経済をリードしている理由を、日本
が国全体で均質なのに対して、地域ごとに独自性があることとしてとらえています。

たとえば、ミシガンの自動車産業に打撃を与えそうな、自動車排ガスの厳しい基準が、カリフォルニア州ではすんなり導入される。ハリウッドの映画産業が目の敵にする無料ネット配信事業がシリコンバレーでは大きく育つ。「議論の分かれるもの」であっても死ぬ覚悟で戦う必要はなく、利害関係の異なる場所で、ちょっと始めてみることが容易に可能である。

まさに多様性の強さですね。逆に、国という大きな単位で方向性を合わせなければいけないと思っている日本のやり方は、一か八かの非常にリスキーなギャンブルと言えるかもしれません。

こうした現状に対して、筆者が唱えるのは「ゆるやかな開国」です。日本の特徴を否定するのではなく、旧来の日本型な人もいるし、シリコンバレーっぽい人もいるし、いろんな人が時には対立したり協力したりしながら全体として日本経済を構成するような、多様性を許容する社会、それこそが解ではないかということです。

(特にネット上では)多くの人が語っているテーマなので、あまり新しい発見は期待せずに読んだのですが、分析・提言ともにとても質が高くて、刺激的な本でした。早速、筆者のブログもRSS登録です。

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