森センセイすごい

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MORI LOG ACADEMYを読んでいて、とても興味深い文章に遭遇。下世話だとは思うけど、お金のお話です。

MORI LOG ACADEMY: プロフェッショナル

たとえば、このMLAを書くことで、僕は1年間に約900万円をいただいている。長編を1作書けば、印税だけで何千万円にもなる。某社がスポンサになった作品では、宣伝料として1000万円を(印税とは別に)いただいた。金額を書いたのは、こういった場合のプレッシャを想像してもらいたいからだ。このプレッシャこそ、仕事の本質ともいえる。生半可な気持ちでするわけにはいかない。1をするために10も100も考える。成果に対してどんな批判が来るか、すべてシミュレートする。何が褒められるかも、もちろんすべてわかる。想定外のことなど起きないくらい計算しなければ、とても作品を手放すことはできないだろう。プロフェッショナルというのは、そういうものだと僕は理解している。

blog(風)の文書をネットに書くだけで900万円!と一瞬思ったけど、よく考えると森先生はこのMLAを(たぶん)盆暮れ正月も休まずに書いているから、1本あたり約2万5千円。さらにこれだけの品質の文章を書こうと思ったら、たぶん1時間~2時間はかかるんじゃないかと思うので(もっと短時間でできるなら、それはその才能に対するプレミアムということ)、時給にしたらそれほどでも無いんだなと後から気づいたりしました。そもそもプロの仕事を、素人ブロガー(たとえアルファブロガーと呼ばれようとも)のアフィリエイト収入とかと比べるのが間違ってますね。

ただなんによせ、あとで書籍化されたり、文中で他の本の宣伝ができるとはいえ、無料で読める日記に(執筆料だけで)900万円も出すとは、出版社も思い切ったものだなあと思います。でも、新聞や雑誌に広告を出す費用に比べれば、よっぽど効果的な宣伝になってるのかも。実際、僕もMLAを毎日読んでみて、「久しぶりに森博嗣を読み返してみるか」と思い立ったわけだし。なんにせよ、MLAが毎日楽しみです。

というわけで、まずはS&Mシリーズ(一番最初の、犀川先生と西之園萌絵のやつ)を読み返しています。1月半で7冊読み終えて、残り3冊。やっぱり面白いです。その中で、幻惑の死と使途を読んでいて目にとまった文章。

犀川先生が、前夜に萌絵から聞いた事件の話を、改めて新聞で読む場面。

固有名詞や具体的な数値が正確であることを除けば、昨晩、萌絵から聞いていた話に追加しなければならない情報は、新聞記事の中には見出せなかった。だいたい、新聞というのはそういった性格のものである。したがって、固有名詞と具体的な数値に関心がない場合には、読む必要はない。

すごい。僕が新聞を読まない理由が見事に言葉で表されています。

次に、有名なマジシャンが殺された時、マニアが自分のホームページを立ち上げて、事件に関する情報を好き勝手に流し始めたとき。萌絵と友人洋子の会話。

「なんか、こういうの見てるとさ、一般の人たちがみんな評論家になっていくみたいで、どの情報を信じたら良いのか、どんどんわからなくなるよね。」洋子は急に真面目な話をする。「このまま、日本中の人がホームページを開設したりなんかしたら、もう情報が多過ぎて、結局は役に立たなくなっちゃうんじゃないかしら」 「たぶん、そうなるわ」萌絵は言う。「今みたいに一部の人がやってる間は価値があるけど。だんだん、自分の日記とか、独り言みたいなことまで全部公開されて、つまり、みんながおしゃべり状態で、聴き手がいなくなっちゃうのよね。価値のある情報より、おしゃべりさんの情報の方が優先されるんだから、しかたがないわ。でも、それはそれで、価値は無いんだって初めから割り切れば、面白いんじゃないかしら。そんな気もするの」 「カラオケみたいなもんね」洋子は頷いた。

1997年の文章です。11年前。

それにしても、森センセイは本当に頭がいいなあと、文章を読んでいてつくづく思います。「頭がいい」にはいろんな種類があるけど、森センセイの頭の良さは、僕の好みの頭の良さ。具体的に、自分の思考に対するメタな視点と、文章の丁寧さです。特に後者。たとえばさっきの「新聞は読む必要がない」の文章では、「固有名詞具体的な数値」と「固有名詞具体的な数値」とが使い分けられていますよね。こういうところです。頭の良さというより、情報や記号(つまり情報の伝達手段)に対する誠意と言ってもいいかもしれません。

さて、GW中にS&Mシリーズの残りの3冊も片付けよう。

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