思考の補助線

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この本は、いったい何についての本だろう?

思考の補助線 (ちくま新書 707)
茂木 健一郎
筑摩書房 (2008/02)
売り上げランキング: 452

少なくとも、茂木センセイの他の本のような「クオリア」とか「勉強法」とか、そういったわかりやすいテーマについての本ではありません。言うなれば、「現代社会の、そして自分自身の、『知性』に対するふがいない現状についての怒りと嘆き」を、茂木先生の脳からそのままダンプアウトしたような本です。

「文系」と「理系」という無意味な教育制度と、宇宙の真理に対する畏怖を持たない文系人間、芸術をはじめとする人間の精神の奥深さに敬意を抱かない理系人間。科学はどんどん細分化され、個別分野に集中せねばその分野で意味のある成果は出せないが、かといって狭い分野内での謎を解き明かしても、「心脳問題」を始めとする壮大な真理には近づけないという焦り。そういったものが、脈絡もなく、でもとても熱く、記されています。なんだか、居酒屋で茂木センセイの熱い語りを聞いてるみたいな感じ。

だからところどころ矛盾というか、茂木センセイ内での分裂もあったりして、たとえば昨今、本来知の世界への入門書であったはずの新書が、「タレント本」の代名詞みたいになってしまった現状を嘆きながらも、自分自身もそんな新書をたくさん出していたり、ポピュラーサイエンスの不在を嘆きながらも、安易なわかりやすさへの堕落を嘆いたり(もちろん、本当のポピュラーサイエンスは単にわかりやすいだけのものではないと思いますが)。

でも、茂木センセイが感じているこの「怒り」「焦り」はとても誠実なものだと感じました。

茂木センセイの「心脳問題」「クオリア」を、「本来科学で扱うべき問題ではない」「そもそも科学では扱えない問題」という理由で「トンデモ科学」として批判する人が多くいます。そうした批判からは、問題は現在の科学の分類に沿って切りわけられるべきであり、現在の科学で理解できることが「科学的なこと」であり、現在の科学で取り上げられない概念や問題は「トンデモ」である、という発想を感じます。

どんな意味あれ分野であれ、「知」に対して興味やあこがれや熱意がある人であれば、きっと楽しめる本だと思います。

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