どうやら流行っているらしいので、読んでみました。「今の自分は本当の自分ではない」と、海外に飛び出したり家に引きこもったり、スピリチュアルにはまったり「あいのり」に出てみたり、いろんな方法で「自分探し」を続ける若者と、それを食い物にしようとする社会についての分析と考察の本です。
ソフトバンククリエイティブ (2008/02/16)
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中田英寿、須藤元気、あいのり、XJAPANのToshi、イラクで拉致された「自己責任」の人々、猿岩石、共同出版、フリーター、就職活動...。いろんな場所に潜む「自分探し」やそのベースとなっているニューエイジや自己啓発の陰を一つ一つ描き出しています。
そうした分析から浮かび上がってくる結論は、若者が「自分探し」をするのは要するに「社会がそれを勧めたから」だということ。没個性でひたすら働いた団塊の世代以降、「個性が大事」「みんなと同じである必要はない」「やりたいことを探すべき」「お金ではない」といった価値観を、学校教育をはじめとするパブリックなメッセージとしても、映画や音楽をはじめとするアート、サブカルチャーの世界からも、若者に向けてひたすらに発信し続けていました。今の若者がやりたくない仕事を我慢してやることをせず、自分探しのために旅に出たりフリーターをしたりするのは、その結果として考えれば当然のことだということです。なるほど、それは納得。
今時の10代~20代の「自分探し」事情や、昨今の「自分探し」のルーツについて一通り眺めるのにはとてもよい本です。おもしろかった。
ただ全編を通して気になったのは、「自分探し」をする若者と彼ら彼女らを対象とするビジネスに対する、あからさまな軽蔑の視線です。著者のそうした感情が文章の端々に現れていて、読んでいて僕は少し疲れました。実際「まえがき」では、
本書は「自分探し」を絶賛したり、あるいは愚かな行為としていきなり軽蔑するのではなく
と言っているものの、章が進むにつれ次第に文章にいらだちがにじみはじめ、あとがきでは、自分がまさに「自分探し」世代であることをふまえて、
本書において「自分探し」をする若者への過剰な攻撃があるとするなら、それは著者が自分自身に向けて書いた部分が大きいからかもしれない。また、それらを囲い込もうというビジネス全般というものが、多分に醜いものとして描かれているのだとすれば、私怨が混じっている可能性がある。
と、やはり自分でも冷静になりきれずに書いていることを認めています。
実際、僕も読みながら少しイラッとしてしまったのは、この本で軽蔑的に書かれている「自分探し」の少なくない部分が、間違いなく自分の中にもあったからなんだろうなと思います。
