サッカー解説者兼コーチ、湯浅健二さんの本。テーマは、攻守ともにますます高度に組織的な戦略が必要となっている現代サッカーにおける、選手一人一人のマインド、メンタル、心構えの重要さについて。タイトルになっている「日本人はなぜシュートを打たないのか」についても触れられていますが、それだけがメインテーマというわけではありません。疑問文なタイトルは、最近の新書にありがちな「釣り」ですかねえ。「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」みたいな。
アスキー (2007/07/10)
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攻撃でいうとフリースペースへの走り込み、守備で言えば素早いプレッシングなど、今のサッカーでは今まで以上に走ることが求められています。そしてそこでは、ただ走るだけではなく、相手ディフェンスを引きつけるための、または相手のパスコースを限定するためなどの「無駄走り」も要求されます。
システマティックな現代サッカーのスタイルを考えれば、その中での「チームのために汗をかいて走ることの必要性」は、観戦者としてピッチ全体を俯瞰する視点からは当然のことに見えるのですが、選手一人一人がそれを実践するためには、かなり強いモチベーションが必要となります。それが無駄に終わったり他人に花を持たせたりする結果になることを知りながら、疲れた身体にむち打って走らないといけないわけですから。システマティックなサッカーを無機質で面白みに欠けたものだとみなす向きもありますが、実はサッカーがどんどんシステマティックになっていけばいくほど、より強いハートが求められるということなのです。
そのうえ、得てして才能ある選手というのは、チームのために汗をかくよりも、チームが自分に合わせることを求めがちなものですが、現代のサッカーにおいては、どんな選手であっても(本書にもあるとおり「マラドーナ」でない限りは)攻守の両方に渡る貢献を要求されます。そこで、監督の仕事のひとつとして、選手の心理マネジメントが大きなウェイトを占めることになります。
この本では、著者のドイツアマチュアチーム所属時代のエピソードや、読売クラブのコーチ時代の話をベースに、組織サッカーにおけるメンタルの重要性をわかりやすく解説しています。そこで語れていることは、本書の中でも頻繁に触れられているとおり、オシム前日本代表監督が言っていた「考えて走る」にも通じるものです。
Amazonのレビューなどを見ると、著者のホームページ(湯浅健二のサッカーホームページ)を読んでいる人には目新しくない内容かもしれませんが、僕は初めてだったのでとても興味深く読むことができました。
サッカー観戦のときの視点がまた一つ広がりました。良書です。
