一般向けの心理学入門書で、とても有名な本です。
Daniel Goleman
Bantam Dell Pub Group (P) (2005/09/27)
売り上げランキング: 8358
もっと自己啓発とかビジネス書みたいなノリかと思っていたら、心理学、しかも神経心理学寄りな内容で、少し意外でした。
この本の主張することろは、IQ(知能指数)が及ぼす影響は、人生における精神的な満足感は言うに及ばず、経済的な成功や、学校での成績においても限定的である、ということです。代わりに重要になるのが、自分の感情を理解しコントロールする能力、つまりEmotioanl intelligenceです。
面白かったのが、Emotioanl hijackingという考え方。我々は、自分の存在(心理的なものも含む)を脅かすような事柄に出会うと、怒ったり、恐れたり、不安を感じたりします。これは、太古の昔からあまり進化していない、脳の中核部分による感情です。こうした感情は、体を緊張させたり、気分を高ぶらせて神経を過敏にしたりします。これは、草原で獲物を刈ったりしていた時代においてはある程度理にかなっていたのかもしれませんが、21世紀の現代に合致しているとは言い難いものです。にもかかわらず、我々はついついこうした衝動に、思考や行動をhijackされてしまいがちです。
大事なのはmeta-congition(メタ認識)。つまり、「いま自分はどんな気分か?」を認識すること。そして、その気分がどこから生じたものであるかを考えること。これができれば、大体の情緒的問題は解決できるんじゃないかと感じました。
それにしても僕がつくづく思うのは、もっと学校でこうした心理学的な知識を子供たちに教えるべきなのではないかということです。実際この本でも、学校でのEmotioanl intelligence教育の重要性に、多くのページが割かれています。僕が子供の頃に「道徳」という授業がありましたが(まだあるのかな?)、これは本当に意味のないものでした。なぜなら、道徳の授業は「大人が考える『子供はこうあるべし』という姿を一方的に押しつけるもの」だったからです。そんなもの子供が興味あるはずありません。それよりも、自分の感情をコントロールし、相手に共感を持って接することで、子供たち自身が抱えるトラブル(いじめ、不安、けんか、などなど)が解決できるということを、子供たち自身が学ぶための手助けをしてあげる方が、ずっと有効だと思うのです。
もちろん、教師の育成や親の理解という点でも、とても難しいことだと思います。そもそも日本では、子供に限らず大人も含めて、self-cognitionやそれをベースとした感情のコントロールなどの心理学的スキルについて、その重要性の認識すらほとんどされていないというのが現状だと思います。(実際僕も、つい最近までそんなこと考えたこともありませんでした。)
右肩上がりの経済成長が今後望めず、また大学全入学時代が目前となった今こそ、数国理社の詰め込み教育以上に、こうしたEmotional intelligenceをもっと皆が身につけることが、これまで以上に大事なんじゃないかなとつくづく思いました。
今回、僕は調子に乗って原著で読んでみましたが、難しい用語がたくさん出てきて、若干死にそうでした…。日本語訳ももちろん出ています。
ダニエル ゴールマン Daniel Goleman 土屋 京子
講談社 (1998/09)
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この日本語訳の書名ですが、個人的にかなり疑問です。この「EQ」という言葉は、本文中でも「Emotioanl intelligence」の訳として使われてるのですが、原著の中には「EQ」という言葉は一度も出てきません。また、「Emotioanl intelligenceは紙と鉛筆のテストで簡単に点数を導き出せるものではない」と書かれており、「EQ」つまり情動「指数」という考え方は、筆者の意図と大きくずれているのではないかな…と感じました。
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