僕は日頃「結構本はよむ方」みたいなふりをしているものの、実は本を読むようになったのはつい最近の話です。なので、読みそびれの名作が山ほどあったりします。これもその一つ。
智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。
漱石というと「日本語が美しい」というイメージがありますが、この小説はその最たるもの。ストーリーというようなストーリーはあまりなく、優美で華麗で、かつ所々ユーモラスな言葉を通して、ひなびた温泉宿を訪れた絵描きが出会う、さまざまな風景が描き出されています。
ところどころかなり難しい言葉が多用されていて、正直よくわからないところも少なからずありました。そういう箇所には一応解説がついているんですが、いちいちそんな解説をチラチラ見ながら読むのも無粋だろう、ということで、想像力をフル回転させながらすらすらっと読んでみました。たぶん、それが正解なのです。この小説の文章は、一つ一つの言葉が意味を持つというよりも、文章全体として意味というか空気を滲み出させているような、そんな感じのものです。
こうして原語で夏目漱石が読めるというのも、日本人に生まれた喜びの一つですねえ。

コメントする