脳と仮想

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「プロフェッショナル 仕事の流儀」の司会や、ちょっと前の雑誌「BRUTUS」での特集など、最近大人気の茂木センセイ。僕もあのなんといえない不思議系なキャラが好きで、blog(クオリア日記)は毎日チェックしています。ただ、著作についてはまだ一冊も読んだことが無かったので、代表作(と帯に書いてあった)らしいこの本を読んでみました。

脳と仮想
脳と仮想
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茂木 健一郎
新潮社 (2007/03)
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おすすめ度の平均: 4.5
5 叡智の森の巨木
5 視野が広い
4 ノート貸そう 小林秀雄礼賛

ご存知のとおり、茂木センセイは脳科学者でありながら、「クオリア」と呼ばれる「意識の中で立ち上がる、数量化できない微妙な質感」というこれまでの科学が無視してきた領域について研究をしている人。

本書では、まず近年の脳科学の通説である「随伴現象」について、批判をしています。随伴現象というのは、「心」というのは脳のニューロン活動に「随伴」して現れる現象、つまり副次的なものであり、心の問題が脳のニューロン活動に影響をおよぼすものではない、だから脳について考えるときは、とりあえず心のことは無視して考えてよい、という考え方。

心が脳によって生み出されるものだということは、当然茂木センセイも大前提として置いている事実です。ただ、それは決して心というものが脳の活動のオマケというか、結果としてたまたま現れたようなものではない、ということ。それが茂木センセイの主張です。

そして、話はデカルト的科学万能主義への批判へと展開します。確かにすべてを科学で記述しようとするアプローチは、すばらしい発展をもたらした。ただ、だからといって科学では記述できない「心」の問題を、果たしてないがしろにしてよいのか、と。

こういった科学万能批判はありがちなものですが、トラディショナルな科学の世界においても十分な経歴を誇る茂木センセイが語ればこそ、納得できる部分も大いにあります。

この辺で、だいたい本の2割くらい。その後は、夏目漱石、柳田國男、テレビゲーム、清少納言など、さまざまな話題を取り上げながら、いかに心というのが彩り豊かで繊細で不思議に満ちたものであるかについて、とくとくと語られていきます。

ただ、本書を通じて語られる心の問題は、なんとなく「心理学の範囲で語られうる話なのではないか」と僕は感じました(心理学のことは何も知らないので、間違っているかもしれませんが)。何が言いたいかというと、茂木センセイは心の問題を既存の科学体系では語れない、と看破した。で、じゃあ心とは何だ?科学で記述できないのなら、どういう手段でその真理に迫っていくのか?ということを茂木センセイは研究されていると、僕は思ったのです。ただこの本からは、問題を単に心理学というか「心」だけからのアプローチで捉えようとしているだけで、随伴現象をキチンと否定できるような、「心」と「脳」の関係を解き明かすための論理は読み取れませんでした。

科学で記述できないものを、科学者がどうやって研究するのか?というのは、とんでもなく難しい問題です。ただもちろん、一流の科学者である茂木センセイはそのことを知りつつ、この問題に取り組んでいるはず。

どうやらこの本は雑誌の連載をまとめたものらしく、だからエッセイ風な軽いノリなのかも。きっと、もっと茂木センセイの研究というか理論について、ガチンコで迫った著作もあるのではないかと期待します。次はそういう本を読んでみよう。

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