ある日突然「昔読んだ名作を改めて読み返してみよう」的気分になったので、この2冊を読んでみました。どちらも大学生の頃に読んだ本だけど、以前には気づかなかったことに気づいたり、感じなかったことを感じたり、なかなか新鮮な気分で楽しむことができました。
まずはカフカの「変身」。
ほんと気分が悪くなる本…。「虫」の描写が気持ち悪いのは当然として、それに加えて読んでいてなんともいえない居心地の悪さを感じるのです。主人公のグレーゴルは、突然虫になってしまった割には結構淡々としています。そうした淡白さと、「ある朝突然虫になる」という突拍子も無い設定のせいで、読んでいても主人公にはあまり感情移入できません。そのかわり、読み進めるにつれ自分がグレーゴルの「家族」と同じ気分になっていることに気づきました。
最初は愛情と倫理感から善く接せねばと感じたり、無理をして善いことをする自分に陶酔したり、次第に無理をしてがんばることに疲れてキレてしまったり、グレーゴルが死んだときに手放しでは喜べないもののひそかな安心と希望を感じたり。
カフカは「虫」が何の象徴かを読み手の解釈にゆだねていますが、それが何であれ、特に最近の日本ではグレーゴルの家族のような状況に追い込まれている人は、実際にすごく多いんじゃないかと思います。
そしてカミュの「異邦人」。
なんとも不思議。
「普通の人が、ふとしたことから狂気の世界に入り込んでしまい、結果として殺人を犯してしまう…」というのなら、わかる。でもこの本の主人公ムルソーは、最初から最後まで変わらない。何も変わっていないのに、普通の生活から、殺人犯になり、最後は自ら死刑を望んでいたりする。確かにムルソーには最初からちょっとずれてるところはあったけど、でもムルソーの「無感覚さ」は誰の中にでもあるものだと思うのです。「簡単に向こう側に行ってしまうかもしれない」怖さではなくて、「実はこちら側と向こう側のあいだには壁なんかないという」怖さ。
ちなみに偶然ですが、Amazonで「変身」のページを開いたら、「いっしょに買いたい」本が「異邦人」でした。


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