アメリカの田舎で暮らす名も無き人たちの、ささやかで少し物悲しい暮らしを切り取った12篇の短編集。
新潮社
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言葉にできないもの
理想の短編集
心地よい短編集一話一話はすごく短いのだけれど、出てくる人々の姿や風景、できごとが圧倒的に瑞々しく、読み始めた瞬間にその話の世界に引き込まれる感じ。話の中の人々は決して幸せではないのだけど、その人たちを見守る温かい視線を、文章の中に感じます。
すばらしい短編集でした。
以下の話はこの本とは全然関係が無いのですが、僕はもともとあまり短編小説を読みませんでした。最近思いついたのですが、その理由は学校の国語の授業だったのではないかと思います。
国語(現代国語)の授業では、長編小説から数十ページ(テストでは数ページ)が抜き書きされて、それを元に「この時の主人公の気持ちに最も近いものを選べ」とか「この章で作者が最も伝えたかったことを100文字以内で書け」とかいうことをさせられます。そもそも、長編から数十ページを抜き出して読んだものを読んだって面白いはずはないし、「主人公の気持ち」も「作者の伝えたいこと」にもあまり興味が持てず、僕は高校生まではほとんど小説を読まない子どもでした。
その後、大学生になって国語の授業を受ける必要が無くなり、自分の好きな小説を「主人公の気持ち」も「作者の伝えたいこと」も気にせずに読めるようになって、初めて読書の面白さを感じることができるようになりました。ただ、長編小説の場合は「ただ読んで楽しむ」というのができたんですけど、短編小説ってストーリーらしいストーリーもないし、何かを「ほのめかしげ」なものが多いので、なんとなく「短編小説っていうのは、国語の授業的にそこに隠されたメッセージを読み取らないといけないものなのかな」という意識があって、ちょっと苦手でした。
でも、この本のような質の高い短編小説を読むと、短編だって単に読んで楽しめればそれでいいんだということがよくわかります。よくできた短編小説であれば、「主人公の気持ち」も「作者の伝えたいこと」も、言葉にはならずともしっかり伝わってきますから。

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