スポーツナビ イエメン戦後 オシム監督会見
最近のオシムの一言々々、一挙手一投足を意味ありげに捉えるような風潮には疑問を感じますが、このインタビューは読み応えがあります。そして、日本のサッカー報道を変える可能性を感じます。
これはサッカーだけに限った話ではありませんが、スポーツにおけるインタビューのレベルの低さには、ほんとうにうんざりさせられることがあります。よくあるのが「大変厳しいゲームでした」と言ってマイクを向ける。インタビューなのに疑問文にすらなっていない…。インタビュアーの選手に対する「あうんの呼吸で俺に合わせろよ」という傲慢によるものです。プロの仕事とは言えません。
これにたいして中田英寿は挑発的な態度で挑みましたが、多くの記者が彼のそういう態度に反感で応じてしまったため(多くの記者は彼より年上だったでしょう)、うまくいきませんでした。
オシムは、通り一辺倒の質問しかしない記者に対し、自らその日の試合の課題点をさらしていきます。オシムのアプローチは中田よりは大人だし、経歴も年齢も記者に威厳を感じさせるのに十分なものです。あのインタビューに参加して、もっと本質的な質問をしていかなくてはと感じなかった記者はいないでしょう(いたら記者失格だと思います)。実際、会見の後半に行くにつれて、より意味深い質問が飛んでいます。そしてオシムもそれに真摯に回答しています。
その中でも僕がもっとも重要だと感じたやり取りがこれ。
――エレガントと効率性は両立しないということだが、エレガントなプレーをする日本の選手についてはどう考えるか?
意味は分かる。あまりにもエレガントなプレーヤーは難しいかもしれない。普通に美しいプレーヤーはどうか? 格好いいかもしれない。美しいプレーをして、その結果はどうなるか? その結果を考慮したい。美のために死を選ぶという選択はある。だが、死んだ者はサッカーができない。美しさを追求して死ぬのは自由だが、そうなるともうサッカーではない。現代サッカーのトレンドはそうではない。今はどんなに美しいプレーをしたかではなく、何勝したか、それが求められる。残念ながら。
明らかに、天才・小野伸二のことを指してのやりとりです。
小野は、パサー(つまり「走る」よりは「走らせる」ことが多い)というスタイルや、リフティングなどの小技の上手さばかりがクローズアップされることから、オシムの掲げる「走るサッカー」とは反対のスタイルの選手であると考えられがちです。確かにオシムサッカーでレギュラーをつかむためには、パスを出した後のダッシュ(パス&ゴー)の徹底など、もっと改善すべき点はあるでしょう。
でも、彼は決して「走らない」選手ではないし、献身的に守備もこなすし、精神的にも決して弱いわけではないと僕は思います。フェイエノールトで確固たる位置を得て、最終的にキャプテンを務めるまでになったことは、その証拠でしょう。怪我の多さは、確かに…いかんともしがたいところではありますが。
それでも、やはり小野は日本の歴史上で、もっともサッカーの才能に恵まれた選手だと思います。サッカーの才能とは、決してリフティングの才能ではなくて、彼がプレーをするチームを勝たせるために使うことができる才能すべて、です。楽な道のりではないでしょうが、まずは浦和で確固たる活躍を見せて、日本代表で、そして再び海外のリーグで、日本の誇る天才のプレーを見てみたいと思います。
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