鈴木宗男事件で逮捕された外務省職員の手記。去年かなり話題になった本ですが、やっと読んでみました。
新潮社 (2005/03/26)
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何が真実であるのか?
途中での感想ですが
こういう才能を無駄にしてはいけない前半は外交の、後半は検察の取調べの、それぞれなかなか語られることのない裏側が事細かに描かれています。圧巻。
著者の主張の軸となるスタンスは、「鈴木宗男事件は"国策捜査"である」というものです。僕としては読む前は、そして読み始めた直後は、これは著者が「言い訳」を語るための本なのではないかという心配を持っていたんですが、そこは比較的正直な視点で書かれていたように感じました。
僕が誤解していたのは、「国策捜査」というのは決して本来全く存在しない事件をでっち上げるということではなく、明らかな有罪と無罪の間の膨大なグレーゾーンのどこにハードルを設定するかを、国策により決定することだということです。つまり、著者は自分のやったことがグレーゾーンに属するものだということ、そして必ずしも自分がやったわけではないことでも、自分の周囲がしたことのうちのいくつかは限りなくクロに近いグレーだったり、明らかにクロだったりすることも理解しています。
担当検事による著者への取調べの中に、こんなやり取りがあります。
検事「(略)外務省の人たちと話していて感じるのは、外務省の人たちの基準が一般国民から乖離しすぎているということだ。機密費で競走馬を買ったという事件もそうだし、鈴木さんとあなたの関係についても、一般国民の感覚からは大きくズレている。それを断罪するのが俺たちの仕事なんだ」 著者「一般国民の目線で判断するならば、それは結局、ワイドショートや週刊誌の論調で事件ができていくことになるよ」
ほかにも、一部新聞はまともな報道をしているにも関わらず、世論はワイドショーや週刊誌の報道に引きずられていくことを指して、「実質的な日本人の識字率は5%以下だ」というような言葉もありました。当然著者はこれを読んだ人がどういう感情を持つかを知った上で、確信犯的にこういうことを書いているのだとは思いますが、著者をはじめとする官僚一般の本音であることは間違いないでしょうね。要するに、「自分たちの仕事は法律に照らせばグレーであるが、それは国のためにやっていることだ。それをまともに新聞も読まないような国民に理解させることは不可能であり、そういう国民の意識にあわせていたらまともに外交なんか進まない。」と。きっとそれは本当のことなんでしょう。でもね。
ただ、こうした「グレーな」仕事の進め方や愚民思想については反感を感じながらも、読み進めるにつれ著者に対する信頼感は増してきます。その言葉の多くは説得力に満ちたものです。ただ、情報考学 Passion For The Futureのこの本の書評にはこんな言葉が。
読み終わって私は著者に90%共感したのだが、10%疑念もある。結局のところ、この本を書いている人も、出てくる人も、共に一般人からは「魑魅魍魎」の一員である。とにかく情報戦を得意とする著者であるから、出版も完成度の高い弁明作戦の一環と思えなくもない。政治の世界からは手を引くような記述はあるのだが...。
結局何が真実なのかはわかりませんよね。ただこの本で重要なテーマはそんなところじゃないわけで。
鈴木宗男事件自体はすでに忘却のかなたに去ってしまった感がありますが、この本は今読んでも十二分に刺激的です。ていうか、この本は鈴木宗男事件に関する本ではないのでしょうね。外交、政治、取調べ、検察、拘置所、人間、などなど…。普遍的なテーマです。なので、「いまさらムネオ事件もなー」と思ってる人も、ぜひ読んでみてください。

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