現代の日本に蔓延する不安を「リスク化」と「二極化」の二つのキーワードに沿って分析する、という本です。すっごく売れてるみたいですね。読んだ感想としては、とりあえず読んでてかなり気が滅入りますし、「それって身も蓋も無いよなぁ~」と思っちゃうわけですが、それもおそらくこの本で指摘されてることのかなりの部分に、納得せざるを得ないからだろうと思います。
ただ、いろんな意味で今の自分に自信が無い人は、あまり読まないほうがいいかも。ずずーんと落ち込んじゃうかもしれませんので…。
先ほど述べたとおり、キーワードは『リスク化』と『二極化』。
まず「リスク化」。より正確に言うと「リスクの普遍化」です。人生設計において、過去にも起業や転職などのハイリスクな選択は存在したのですが、それとともに「入れる会社に入って定年までソツなくこなす」というローリスクな選択肢もしっかり存在していました。しかし現代では、そのようなローリスクな選択肢というものは存在せず、すべての人がリスクをとることを強要されてしまいます。つまり、期待値の低い賭けを強要されているのです。
次に「二極化」。高度経済成長時代には、妻は夫の給料が安い程、それを補うために働きに出たるとい家庭が多かったのですが、現代では夫の給料が高いほど、妻がフルタイムで働く傾向があるのだとか。夫婦共働きというシステムが、家庭間の収入格差を平準化するのではなく、勝ち組夫婦と負け組夫婦の格差を更に大きくする方向に作用しているのです。そして、勝ち組夫婦は子供の教育によりお金をかけることができ、その結果子供は…、というように、二極化は更に加速します。
もちろん、リスクを取って成功し勝ち組に入る人はいます。ただそううまくは行かない人もいますし、社会全体がかつてのような成長を望めない今、どちらかといえば成功できない人のほうが多くなってしまうでしょう。また、全員が成長していたときには感じられなかった『格差』が現代では決定的なものになり、勝ち組に入れない人たちが希望を喪失してしまっていると、この本では論じています。
またこの本で特に面白いのが、学校教育を就職のための『パイプライン』として定義しているところ。その意味は、よい大学に入ればよい会社に入れるということだけではありません。
ある職業に就きたければ、その職業に就くための学校に入る必要があるということは、ある職業に尽きたくても、その職に就くことが見込める学校に「合格」できなければ、あきらめざるをえないということである。学校システムの効用は、実はここにあるのだ。青少年は、学校システム、そして、受験の中で、過大な希望を「あきらめ」させられ、結果的に自分の能力に見合った職業に就くように振り分けられる。
かつて身分や家柄で自分の将来が決まっていたように、早い段階で将来を限定させてしまうことにより、過大な希望を持たせないことで、社会を安定させていたというのです。それに対して現代は、誰もが「夢を持とう」「自分のやりたいことをしよう」と言われます。ただ社会における(少なくとも経済的な)希望の総量は減少しているし、その希望をつかむ人もいるにせよ、それ以上にの希望を失った(失う)人が増えてしまうわけです。
もうほんとに、一冊を通じて書かれていること全部、身も蓋も無いです。最後の章として「今何ができるのか、すべきなのか」として対策みたいなことが書かれていますが、はっきり言って中身ゼロです。結局、著者も「解決策なんかないんだ」と知りながら、一応書いてみただけなんでしょうね。
ただ、とりあえずその身も蓋も無い分析は、少なからず真理を突たものです。そういう意味ではお勧めの本ですし、読めばなるほどと納得せざるを得ないと思います。ただ最初にも言ったとおり、かなり凹む内容なので、くれぐれも元気がない人は読まないように…。

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